生産技術のコンサルタントをしている坂井です。
自動車部品と電子部品の工場で、接着やシールの工程を20年ほど担当してきました。
ここ数年、塗布装置の仕様書を見ていて気づくことがあります。
駆動方式の欄に「ACサーボモータ駆動」と書かれた機種が、明らかに増えました。
先日も若手の担当者から「エア式と何が違うんですか、値段は上がりますよね」と聞かれまして。
その場でうまく答えられなかったので、自分の頭を整理しておきます。
エア式は「圧力と時間」で量を決めている
まず、エア式がどうやって吐出量を決めているかです。
シリンジに圧縮エアをかけて液を押し出し、何秒押すかで量を調整する。
仕組みとしてはこれだけです。
つまり吐出量を決めている変数は、圧力と時間の2つしかありません。
構造が単純なので装置は安く、メンテナンスも楽です。
低粘度の液を少量塗るだけの工程なら、私は今でもエア式を勧めます。
問題は、圧力と時間が同じでも、出てくる量が同じとは限らないことです。
- タンクの液が減ると、押し出される条件が変わる
- 朝と昼で室温が違えば、液の粘度も変わる
- 材料のロットが変われば、粘度そのものが違う
これらはすべて吐出量のばらつきとして表に出てきます。
サーボ式は「動いた距離」で量を決める
プランジャ式などのサーボ駆動は、考え方が違います。
計量室に入ったプランジャが何ミリ進んだかで吐出量が決まる。
断面積×移動距離ですから、体積そのものを直接指定していることになります。
そしてACサーボモータにはエンコーダという位置検出器が付いています。
指令した位置に本当に到達したかを常時測り、ずれていれば補正する。
富士電機の解説ではこれをクローズド・ループ制御と説明していますが、要するに結果を見ながら直す仕組みです。
ここが本質だと思っています。
サーボ化とは「モーターが高級になった」話ではなく、吐出量を決める変数が圧力と時間から機械的な体積に置き換わることです。
高粘度になるほど、この差が効いてくる
では、なぜ高粘度材料でサーボ駆動が選ばれるのか。
粘度が温度で大きく変わるからです。
| 流体(20℃) | 粘度の目安 |
|---|---|
| 水 | 約1 mPa・s |
| 灯油 | 約2.4 mPa・s |
| グリセリン | 約1,500 mPa・s |
水でさえ0℃と100℃では6倍以上違います。
高粘度樹脂なら、振れ幅はさらに大きくなります。
タンクの中では適温でも、ホースを通る間に温度が下がって粘度が上がる。
エア式なら同じ圧力・同じ時間でも吐出量は減ります。
容積計量なら、粘度が変わっても押し出す体積は変わりません。
もうひとつはフィラーです。
放熱材や導電ペーストのようにフィラーを高充填した材料は、粘度が高いうえにポンプ側の摩耗も進みます。
高粘度対応をうたう機種では、この対策がスペックに現れます。
たとえばプランジャポンプ式のP-FLOW Hタイプは、ポンプ内の耐圧を19.6MPaまで高めて1〜1,050,000mPa・sに対応し、特殊な材質で計量ポンプの耐摩耗性を上げていると説明されています。
1,050,000mPa・sは1,050Pa・s、グリセリンのおよそ700倍です。
実機の仕様は高粘度材料に対応したディスペンサーの製品ページで確認できます。
なお、粘度の測り方にはJIS Z 8803(液体の粘度測定方法)という規格があります。
材料側の提示値と装置側の対応範囲を比べるときは、測定条件も見ておいてください。
それでもエア式は無くならない
ここまで書いておいて何ですが、サーボが万能ということではありません。
実際、ディスペンサ専業メーカーの製品一覧を見ても、サーボ駆動機とエアシリンダ駆動機は今も併売されています。
置き換わったのではなく、使い分けが進んだと見るのが正確でしょう。
私が選定を相談されたときの目安はこうです。
- 低粘度で、多少のばらつきを許容できる工程ならエア式で十分
- 粘度変動が直接不良につながる工程は容積計量+サーボ
- 材料単価が高い工程は、液ロス削減の効果で価格差を回収できることが多い
装置単価だけで比べれば、サーボ機は必ず負けます。
それでも私が見てきた失敗の多くは、初期費用を優先した結果、吐出量のばらつきを人の検査で吸収し続けることになったケースでした。
その人件費は、数年で価格差を超えます。
まとめ
ACサーボ駆動が増えている理由を、私なりに一文でまとめるとこうなります。
吐出量を決める根拠を、変わりやすい「圧力と時間」から、変わらない「体積」へ移したかったからです。
温度でもロットでも性状が動く高粘度材料を、動かない基準で計るための選択だと考えています。
装置を選ぶときは、粘度の上限値だけを見て終わりにしないでください。
フィラーの有無、想定される液温の変動幅、そして繰り返し精度。
この3つをセットで詰めておくと、導入後の苦労がだいぶ減ります。